Errand Consultingの考えるグローバル人事とは

Errand Consultingは、グローバル人事を単なる海外人事管理や海外拠点支援とは捉えていません。私たちが考えるグローバル人事とは、Strategic HRを国・地域・事業を越えて機能させるための人事機能です。


グローバル人事は、部署やシステムだけでは実現しない

日本企業がグローバル人事を強化する際、まずグローバル人事部門を設置し、HRISプラットフォームを整備し、海外拠点の人事情報を可視化することから始めるケースが多く見られます。

組織の設置やHRISの整備は重要です。しかし、それだけでグローバル人事が機能するわけではありません。

グローバル人事部門を設置しても、役割・権限・情報フロー・意思決定プロセスが明確でなければ、その部門は海外拠点からの人事相談や個別案件に対応する窓口になりやすくなります。その結果、本来果たすべき「人的資本に関する経営企画機能」や「グローバル全体の人材・組織・リスクを経営判断に接続する役割」を担えなくなります。

HRISを導入し、グローバルHR担当部署を作り、COEやHRBPという名称を組織図に置いたとしても、各国の人事・各ビジネスラインの人事・COE・HRBP・HRDが連携し、経営・事業・地域を横断して機能していなければ、グローバル企業のような人事機能にはなりません。

グローバル企業の人事部門は、Strategic HRを通じて、国・地域・事業ごとの収益性向上、組織能力の強化、人材配置の最適化という命題を共有しています。一方で、日本企業のグローバル人事は、労務リスク管理・海外拠点管理・BCP・コンプライアンス対応に重点が置かれやすい傾向があります。

リスク管理はグローバル事業において不可欠です。しかし、グローバル人事がリスク管理や可視化に過度に偏ると、人材・組織を通じて事業の成長や収益性に貢献するというStrategic HR本来の役割が弱くなります。


なぜ外資系企業には「グローバル人事部」が見えにくいのか

欧米系のグローバル企業では、「グローバル人事部」という単一の部署を設置していない企業も少なくありません。それはグローバル人事機能が存在しないからではありません。

むしろ、Strategic HRが長年にわたり運用され、COE・HRBP・HRD・タレントコミティ・HRIS・SSC/BPOなどの機能が、経営・事業・地域をつなぐ仕組みとして組み込まれているからです。

  • COE:報酬、タレントマネジメント、ラーニング、組織開発、HRISなどの専門領域を担い、各国・各地域のHRDを支援
  • タレントマネジメント:HRDがグローバルタレントコミティの座長を務め、各国HRDがメンバーとして参加。キーポジション・後継者・人材リスク・育成課題をレビュー
  • グローバルHRBP:各ビジネスラインに配置され、異動・配置・組織変更・リーダーシップ課題を担当

つまり、グローバル人事は一つの部署ではなく、COE・HRD・HRBP・タレントコミティ・HRIS・SSC/BPOが連携することで成立する分散型の人事機能として運用されています。


グローバル人事強化に向けて、まず問うべきこと

したがって、まず問うべきなのは「グローバル人事部門を作るべきか」ではありません。

自社の本社人事部門は、グローバル人事に対してどのようなアカウンタビリティを持つべきか。
そして、そのアカウンタビリティを果たすために、どこから手を付けるべきか。

理想的には、本社人事部門は、タレントマネジメントと労政の両面において、経営・事業・地域をつなぎ、人材・組織・リスクを意思決定に接続できる状態を目指すべきです。しかし、これは一朝一夕に実現できるものではありません。

重要なのは最初から完成形を目指すことではありません。まず、本社人事部門が何に対して説明責任を持つべきかを明確にすることから始めることです。


グローバル人事でよく見られる課題領域

以下に挙げる課題の多くは、単なる人事オペレーションの問題ではありません。経営・事業・地域・組織・リスク・データを横断する課題であり、本社人事部門だけで完結できるものではありません。

1. グローバルタレントマネジメント

  • グローバルタレントの定義が明確でない
  • キーポジションが可視化されていない
  • 後継者計画が国・地域ごとに分断されている
  • 海外経験がキャリア形成や登用に接続されていない
  • タレントレビューが経営判断に活用されていない

2. グローバルモビリティ・三国間異動

  • 日本本社から海外拠点への赴任管理に偏っている
  • 海外拠点間・第三国間の異動ルールが整備されていない
  • 税務・社会保険・ビザ・処遇・家族帯同の管理が属人的
  • 赴任コストは大きいが、投資効果が見えにくい
  • 帰任後の配置やキャリア活用が十分に設計されていない

3. グローバル労政・海外拠点人事管理

  • 現地HRの運用実態が本社から見えにくい
  • 本社方針と現地雇用慣行の間にギャップがある
  • 労務リスクやコンプライアンスリスクが後追いで把握される
  • 労使関係・従業員対応・ハラスメント対応の管理基準が国ごとに異なる
  • 本社としてどこまで関与すべきかが明確でない

4. グローバル人事制度

  • 等級・報酬・評価・福利厚生の共通化・現地化の方針が曖昧
  • グローバル共通制度を導入しても現場で活用されていない
  • 現地制度と本社制度の整合性が取れていない
  • 報酬水準や評価基準の説明責任を本社が持てていない

5. HRIS・人事データ

  • HRISを導入しても、経営判断に使えるデータになっていない
  • 各国のデータ定義が統一されていない
  • データ更新責任が不明確
  • 可視化はできても、意思決定に接続されていない
  • タレント・報酬・評価・異動・リスク情報が分断されている

6. 組織設計・ガバナンス

  • 本社人事・現地HR・COE・HRBPの役割分担が曖昧
  • グローバル人事会議体が機能していない
  • 人材・組織課題が経営会議に上がらない
  • ビジネスライン別HRBPと国・地域別HRDの連携が弱い
  • グローバル人事部門が海外案件対応窓口になっている

7. 予算・コスト管理

  • 海外人件費や赴任コストの全体像が見えにくい
  • コスト管理はしているが、投資対効果の議論になっていない
  • グローバル人材育成やモビリティの費用対効果が説明できない
  • 予算管理が財務主導で、人事戦略と接続されていない

8. 採用・採用ブランド

  • 現地採用の基準やプロセスが国ごとにばらついている
  • グローバル採用ブランドが整理されていない
  • 採用データがグローバルで共有されていない
  • 採用が事業やタレント戦略と連動していない

Errand Consultingのグローバル人事支援

これらの課題は、個別に見れば制度・業務・システム・リスク管理の問題に見えます。しかし本質的には、グローバル人事をStrategic HRの延長として設計できているかという問題です。

グローバル人事に必要なのは、単なる可視化や統制ではありません。人事が経営・事業・地域をつなぎ、人材・組織・リスクに関する情報を意思決定に接続する機能です。

Errand Consultingは、グローバル人事を「海外人事管理の高度化」としてではなく、Strategic HRをグローバルに機能させるための人事機能設計として支援します。